首都移転にNO!
<東京都知事本局地方分権推進部国政広域連携・首都調査担当>

トップページ東京都はこう考えます首都移転に関する知事発言
平成11年第3回都議会定例会 知事発言 (平成11年9月14日)


 次に、首都機能移転問題について申し上げます。

 来る9月27日、国会等移転審議会の答申を間近に控え、私は衆議院の国会等移転特別委員会において、東京都民を代表して、首都機能移転問題に対する意見表明を行います。広く都民や国民の合意を得ること全くなく、既成事実だけを積み重ね、手続きだけが一人歩きすることは、東京の危機だけではなく、国家全体にとっても憂慮すべき事態であります。

 私は、先の施政方針演説で絶対反対の立場を明確にいたしましたが、改めて、この問題に対する基本的な考え方を申し上げます。

 首都機能移転は、「国家百年の大計」として考えるべき問題であるにもかかわらず、バブル期における東京一極集中の是正から最近の人心一新論にいたるまで、わずか十年足らずの間に移転の理由は大きく揺らいで変わり、もはや、移転の意義そのものが失われていることは明白であります。

 千年紀をまたごうとするこの重要な時期に、国政に求められていることは、何よりもまず、地方分権と規制緩和の推進に全力を挙げるとともに、近代工業社会を超えた新しい国づくりの哲学、すなわち国家のグランドデザインを早急に国民に提示することであります。

 国会や政府機能の移転さえ実現すれば、人心の一新が図られ、新たな国家運営がスムースに始動するなどという主張は、本末転倒といわざるを得ません。移転を前提とした議論については、直ちに再検討することを強く求めます。

 今日、国家や都市の繁栄と安全のためには、日本も東京も国際社会の中で強い影響力を発揮することのできる、グローバルプレイヤーであり続けることが極めて重要であります。

 東京は、ニューヨーク、パリ、ロンドンなど大西洋社会以外で誕生した、アジアで初めてのグローバルプレイヤーたる都市ですが、現在では、シンガポール、ソウル、上海など、台頭するアジア諸都市との激しい競争が始まっております。東京の国際競争力が衰退すれば、東京がローカルな都市に転落するだけではなく、日本の国際的な地位は大きく低下することにもなります。

 21世紀に向けて我が国が選択すべき道は、莫大な費用を投じて、国力の大幅な低下を招きかねない首都機能の移転を進めるのではなく、東京湾沿岸地域の有効活用などを含め、東京を中心としたメガロポリスがもつ潜在的な力を引き出し、日本を再生することであります。

 日本の頭脳であり心臓部でもある東京圏は、すでに、国の行政機関等の移転によって、業務核都市の育成・整備が着実に進んでおります。移転に必要な経費の一部で、環状鉄道や道路整備に集中的な投資を実施さえすれば、混雑緩和による経済効果はもちろん、環境改善や防災機能の向上の面でも飛躍的な効果が生まれ、日本全体の国際競争力の強化や経済の活性化にも繋がります。

 また、首都はその国の歴史や文化を背負った重い存在であり、単なる機能論だけで処理すべきものではありません。例えば、現在の国会や皇居周辺は、外国の美しいとされている首都と比べても遜色のない、我が国の歴史と文化を醸し出す見事な景観をもっております。成熟した都市環境を保存再生し、新しい価値と共生させながら現代都市を築き上げていくことこそ、東京の魅力をさらに 向上させていくことになります。

 私は、東京がこれまで培ってきた歴史的文化的蓄積を最大限に活かしながら、東京の再構築に着手し、国際社会における東京の魅力を一層高めていくことを強く決意いたします。

 首都機能移転については、70%にのぼる都民の皆さんが、現在の財政状況下で移転のために莫大なお金をかけるべきでないとしております。

 今後、私は、これまで以上に移転反対の姿勢を強く訴えていくため、世論を喚起する活動を積極的に展開するとともに、都議会をはじめ、区市町村や民間団体と一体となった運動組織を来月結成し、反対集会を開催いたします。さらに、12月には、都のみならず広く各界に呼びかけた総決起大集会を開催いたします。都議会並びに都民の皆さんのご理解とご協力を心からお願い申し上げます。