太田雄貴の未来ビジョン

スポーツの可能性
~スポーツの応援文化~

―ビジョン懇談会では「スポーツ応援文化」をテーマにプレゼンテーションしていただきましたが、2040年、2050年の未来のスポーツとはどうなっていると考えていますか。

オリンピック(の価値)というものが再定義され始めるというのは考えます。一つ、パラリンピックの記録がオリンピックの記録を超え始める瞬間が出てくると思うんです。義足等の発展とそれに伴う競技力向上などで、ある瞬間、少なくとも何かの競技では、オリンピック記録よりもパラリンピック記録の方が上回ってくるだろうな。もしかしたら2040年を待たなくても出てくると思っています。

もう一つは、これから人口減少を迎える中で、スポーツに携わる人々が、既存のスポーツを選ばなくなってくるだろうなと。もっとアーバンスポーツ的なものとか、eスポーツだとか、そういったものにフォーカスしていくんだろうなという気がしています。

―今、eスポーツの例も上がりましたが、未来のスポーツのあり方はどうなっていますか。

スポーツの定義も怪しくなると思うので、ニュースポーツがどんどん生まれると思います。今まで仕事一筋でエリート街道を歩かれてきた人たちが、ただ走るよりか何々しながら走った方が楽しいよねとか、ただフェンシングをするより何々しながらフェンシングした方が楽しいよねという話をしたら、50人ぐらいしかいないコミュニティーなんだけど、1つの新しいスポーツをつくっちゃおうとか、そういうことが起こるんじゃないかなと思う。必ずしも今ある競技に全員が入ってくるとも思わないです。

ICTを使えば、世界はいくらでも広がってきますし、それに加えて、今、インフルエンサーとかいるみたいに、インターネット×スポーツがまさにそうで、自分たちが考えついたスポーツをユーチューブで流して発表していたら、どこかでバズる(※)とか、そんなことも考えられる。そうしたら、「それじゃスポーツ団体でも設立するか」みたいなこともゼロじゃないと思うんです。


※ウェブ上で、ある特定の事柄について話題にすること。特に、SNSを通じて多人数がうわさをしたり、意見や感想を述べ合ったりして、一挙に話題が広まること。

―スポーツが抱える課題を解決するためにテクノロジーができることはありますか。

基本的に、自分たちの競技のどこに課題があるのかというものを、テクノロジーを使ってどう課題解決していくかというところだと思うんです。

そういった中で、フェンシングなんかで言うと、どっちが突いたかわからないといったら、どっちが突いたかわかるようなものを映像の中に付加情報として組み込んだものを、ライブストリーミングだったりとか会場内、そしてテレビとかニュースとか、そういうところに流していくということをしていくとか、そういうふうにしていく必要があるなと。

―将来、競技会場に集まって観戦するということが無くなっていることもあると?

それは無くならないんじゃないかと思う。一緒にいるということが価値になるんじゃないかな。要は、誰かと何かを一緒に観たり生身で触れられるというような感覚は会場に行くしかない。やっぱり、モノ消費からコト消費、経験とか体験にさらにとシフトしていき、経験や体験は、よりリアルな価値が出てくると思う。

―スポーツを経験、体験というところにシフトしていくために必要なものはありますか。

そうですね。やっぱり幼少期から、そういう癖づけをしていかなきゃいけないんだろうなと思います。日本はアメリカなどに比べて、スポーツ観戦に使うお金が少ないんですよ。だから、そこはまだ伸びしろがあるんじゃないかなと思います。スポーツ観戦にどう付加価値をつけていくか。今、DeNAとか楽天だとかソフトバンクといったプロ野球チームや、バスケの一部チームも少しずつやり始めてはきていると思うので、こういったところじゃないかな。

―一方で、これから高齢の方も増えてきますが、その頃のスポーツの状況はどのようになっていますか。

その頃はシニアオリンピックができるかもしれない。だから、その辺も目を向けなきゃいけない。IOCもね。だから、ユースオリンピックとかあるから、シニアかシルバーなのか、そういうのができてくるのかなという。そういう生きがいを持ち続けることというのは、絶対必要だと思っていて。だから、いつまでたっても、みんなが目指し続けられるものをセットしていくのは、国としても結構重要かもしれないです。

―定年を迎えた方の余暇の過ごし方について、注目が集まっていますがどう思いますか。

結局、コミュニティーを持っているかどうかというか、必要とされているかどうか、インボルブされているかどうかだけ。昔だったらゲートボールとかしている人がいたじゃないですか。ああいうのって、やっぱりすごく重要で、ゴルフもそうだと思うんですが、朝起きてから、自分の生活リズムをつくっていける余暇のつくり方が重要。

―これからの未来を担う子供たちへのメッセージをお願いします。

僕も、10代の頃は、ただのフェンシング馬鹿だったので、今もそうですけど、何もしてなかったんで、今の自分に自信がないとか、そういうのは至って普通のことだと思う。だけども、目の前のこととか、できることを一生懸命やることでしか未来は変わらないから、あんまり大きな夢を抱き過ぎるというのもいいけども、目の前のことをおろそかにせず、毎日少しずつ、昨日できなかったことが今日できるようになるということを心がけていくと、努力できる癖ができ、なりたい自分になれるんじゃないかな。