宿輪理紗の未来ビジョン

技術をもっと人のために

―東京の未来を考える上で、宿輪さんが伝えたいと思うメインテーマは何ですか?

私が考えるメインテーマは、「技術を人のためにもっと役立たせたい」ということです。

―そのテーマを伝えたいと思うに至ったきっかけなど伺えますか?

きっかけは再生医療に出会い、今までの常識は技術によって覆されると実感したことです。

3年前、TWInsで研究を開始した頃に目の前でぴくぴくと拍動している心臓の細胞のシートを見て、将来は体外で心臓を作れるようになって心臓病の患者さんを助けられるかもしれないという話を聞いたときに「えっ、そんな夢みたいな話が実現しようとしているの?」と驚きました。また、この技術は医学と工学の連携があったからこそ生まれた技術で、医学だけでも工学だけでも成し得なかったと聞き、異なる分野が連携することの大切さを学びました。このような技術がより早く求めている人の元に届いて、世界中の人が幸せで充実した日々を過ごせるようになればいいなと思っています。

―明るい東京の未来として、どのような社会を思い描きますか?

まず、若い人はもちろんのこと、お年寄りの方も心身ともに健康で生き生きとしているような社会を思い描いています。例えば、今は一定の年齢になると退職しなければならない企業がほとんどですが、多くの知識や経験など持っていて働き続けたい人が退職しなければならないのはもったいないと思います。社会から求められるのであれば、働き続けて良いのではないでしょうか。そうするとお年寄りの方も自分の存在意義を再認識できて、より毎日が楽しくなって、精神的にも健康になるのではないかなと思います。

また、機械技術の進歩により精度の高いロボットが生活の様々な場面に取り込まれている未来も思い描いています。例えば、災害救助などの分野ではドローンが捜索犬とともに活躍するようになるのはそう遠くない未来だと思います。

さらに、農業の生産性もより上がると思いますが、遺伝子組み換えでも言われているようにリスクについてはしっかりと説明がなされ安全への認識が世の中で共有されていくことが必要と感じています。技術の進歩とともにその時々の常識や人の考えも変わるように、いろいろな方の意見を聞いていくことが大切だと思います。

―その未来像に至る中で必要と考えていることは何ですか?

すべての技術はAIの進歩によりさらに指数関数的に発展すると思います。しかし、最終的にこの発展した技術をどこにどうやって使用するか決めるのは人です。自分が世の中の「当たり前」だと思っていると、自分にとって価値がない技術がもしかしたら他の人にとっては待ち望んでいた技術かもしれないという発想すら浮かんでこないと思います。1人1人が他の人に興味を持ち、異なる価値観に触れ、自分の視野を広く持つことが重要なのではないかなと思います。

―2050年代の東京で実現できていれば良いと思うものは何ですか?

これは東京とは関係なく一女子としての意見になってしまいますが、肌の老化を止めるような薬や治療法が出てきていると嬉しいです(笑)。肌は生命に直接深く関わる部分ではないので、2050年代になれば細胞などを用いて誰でも容易に安価に肌の老化を止められるようになっているのではないでしょうか。

―未来を担う子供たちへのメッセージをお願いします。

自分の殻に閉じこもることなく何事にも挑戦して欲しいです。例えば、いつも野球ばっかりだったけれど友達に誘われたらサッカーしてみるというような小さな挑戦でいいと思います。その挑戦・経験から何か得るものはあると思います。もしかしたら将来につながるかもしれません。その時は優先度が低かったり必要ないと思ったりすることも、無駄だからやらないと最初から決め付けないで、チャレンジしてみて色んな人と交流してそこから様々なことを学んで欲しいと思います。