学生向け金融セミナー 知っておきたい金融の基礎知識 第6回

更新日

皆さん、こんにちは!株式会社WealthLead(ウェルスリード)の濵島です。今回は、現在の「金利」についてお話したいと思います。

私は、1988年の証券会社入社以来、31年間金融の世界で仕事をしています。その31年間の中で、最も劇的に変化したのが「金利」だと思います。

長期金利は、通常は10年国債の利回りを指し、市場で取引されています。景気の先行きに懸念が強まると金利に低下圧力がかかります。反対に景気が良くなった、あるいは景気は先行き良くなるという見通しが強まれば金利は上昇します。
下記のグラフは日・米・独の長期金利の推移です。2010年当時、米国やドイツでは3%以上、日本」でもまだ1%を超えていた長期金利は、上げ下げはあるものの一貫して低下してきました

グラフ1

 

以下の表は2019年10月11日現在の各国の長期金利です。

表1

 

お気付きでしょうか。世界のいたるところで「マイナス金利」になっているのです!今や世界の債券残高の1/4、約17兆ドル(1,800兆円)もの債券の金利がマイナスとなっています。

普通はお金を借りたら金利を払いますよね。マイナス金利ということは、お金を借りたら金利をもらえる、お金を貸した方が金利を払うという状態です。おかしくないですか!?

なぜこうなったのでしょうか。
2008年のリーマンショックをきっかけに、世界的に金融危機が起こりました。その金融危機と戦うため、各国の中央銀行は政策金利を0付近にまで引き下げました。その後も大半の国で低成長が続き、一部の国ではマイナス金利政策を導入しました。マイナス金利は、銀行が中央銀行にお金を預けると金利を払わなければならないため、企業等への融資に積極的になることで景気に良い影響を与える効果を狙ったものです。それでも銀行は企業へ積極的に融資するよりも国債を買って利益を出すことにより注力しました。その結果、銀行の国債購入(=金利低下)が続き、景況感の悪化と相まって長期金利も低下し続け、ついに金利はマイナスの世界に沈んでしまいました。日本においては2016年1月にマイナス金利政策が導入され、まだ当分の間は続くと思われます。

それでは、マイナス金利は私たちの暮らしに影響があるのでしょうか。

欧州では、手数料を取ることで預金を実質的にマイナスにする銀行が出てきています。ドイツ第2の信用金庫であるベルリナー・フォルクスバンクは、リテール顧客に対し10万ユーロ(約1,180万円)を超える預金にマイナス0.5%の金利を適用し始めました。また、デンマーク第2位のユスケ銀行は、75万クローネ(約1,200万円)の預金口座にマイナス0.75%の金利を適用すると発表しました。その一方で、世界初となるマイナス金利の住宅ローンを始めました。マイナス金利分だけ毎年残債が減っていく仕組みです。

日本でもマイナス金利を預金者に転嫁するかどうかの検討は始まっています。りそな銀行は、2年以上入出金のない1万円未満の口座に年1,320円の手数料を課しています。また、みずほ銀行はATMでの振込手数料を引き上げると先日発表しました。個人向けの預金にマイナス金利適用される可能性は低いと思いますが、形を変えて預金者の負担が増える可能性は高そうです。

現在のようなマイナス金利はいまだかつて経験したことがない世界です。今後どのような影響が出るのか、以前のように普通に金利が付く世界に戻るのか、予断を許しません。一つはっきりしていることは、預金や債券に十分な金利が付くことは当面期待できそうにないということです。資産形成を考える上でも金利の状況はしっかりとチェックしていきましょう。

記事ID:000-001-20231008-000611