学生向け金融セミナー 知っておきたい金融の基礎知識 第7回

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皆さん、こんにちは!株式会社WealthLead(ウェルスリード)の濵島です。今回は、最近発表になったIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」について触れてみたいと思います。IMFは国際貿易の促進や為替の安定を目的とする、世界189ヶ国が参加する国際機関です。世界経済見通しは毎年4月と10月に発表され、1月と7月にはデータをアップデートしています。

10月15日に発表になった「世界経済見通し」よると、世界の経済成長率(実質GDP)見通しは以下の通りです。

表1

 

世界全体では、2018年の3.6%成長から2019年は3.0%へ鈍化し、2020年は3.4%成長とやや回復する見通しとなっています。3.0%という数字は、リーマンショックが起きた2008年(3.0%)とその翌年2009年(-0.1%)以来の低さとなります。

資料の中で指摘されているポイントをいくつかお示しします。

  • 2019年の成長率3.0%は、金融危機以降で最も低い数字であり、2017年の3.8%から見ると深刻な落ち込み
  • 2019年の低成長の特徴は、製造業と世界貿易が急速かつ広い範囲で落ち込んでいる一方、サービス業は堅調
  • 要因は、米中貿易摩擦によって高まる貿易障壁地政学リスクの高まり等による不透明感の増大先進国における高齢化や生産性の伸び悩み新興国におけるマクロ面からの制約
  • 各国で進められてきた金融緩和下にあっての3.0%成長であり、これがなければさらに0.5ポイント低下
  • 米中貿易摩擦は2020年までに成長率をさらに累積で0.8%押し下げる可能性

次のグラフをご覧ください。

グラフ1

 

それぞれ、青線が鉱工業生産指数、赤線が世界貿易量、黄線が製造業PMIです。直近の3ヶ月平均を前年比伸び率でグラフ化しています。製造業PMIというのは、製造業の購買担当者に、景気が良いか悪いか、この先はどう思うかを聞いたものです。
2018年から赤線と黄線が急減速し、今年に入ってマイナスになっています。2018年は米中貿易摩擦が勃発した年であり、米中の関税引き上げ合戦が貿易量と企業の景況感に相当な影響を与えているのです。

また、世界経済に占める名目GDPの割合は、米国が24.4%、中国が15.7%で、2か国で世界の約40%を占めています。この両国がいがみ合ったのでは当然世界中に大きな影響が出てしまいます。ちなみに、日本は世界第3位で5.9%、以下ドイツ4.7%、フランス3.3%、イギリス3.3%、インド3.2%と続きます。米中に日本とドイツを加えて約50%、フランス、イギリスインドまで入れると世界の約60%を占めることになります。

今の世界経済にとって、最大のリスク要因は米中貿易摩擦であることは間違いありません。さらに、世界経済見通しでも指摘されている地政学リスクも大きな課題です。ブレグジット、サウジアラビアとイランの対立、北朝鮮の非核化の停滞、日本と韓国の関係悪化、香港のデモ・・・。また、気候変動も大きなリスクです。最近の台風や大雨被害も地球温暖化と無関係ではないはずです。
現在のグローバル経済においては、世界的に分業体制が確立し、サプライチェーンが世界中に張り巡らされています。世界のどこかで起こったことが離れていても色濃く影響が出てしまうのです。

まさに今、世界各国が協調して課題解決に取り組んでいくことが求められています。そして、投資をしていく上では世界で起きていることを把握し、大局的に見ていくことを心掛けましょう。

記事ID:000-001-20231008-000612