学生向け金融セミナー 知っておきたい金融の基礎知識 第11回

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皆さん、こんにちは!株式会社WealthLead(ウェルスリード)の濵島です。今回は大きな潮流となってきた「ESG投資とSDGs」についてのお話です。

ESGというのは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の英語の頭文字を取った言葉です。具体的には、「E」は地球温暖化対策や環境ビジネス、「S」は人権や地域社会への取り組み、「G」は透明性の高い統治体制や女性活躍、積極的な情報開示などが挙げられます。
世界的にESGを考慮した投資が大きな潮流になってきました。企業の価値を測る材料として、キャッシュフローや利益率などの財務情報だけでなく、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとしてESGが注目されているのです。

ESGという言葉が知られるようになったのは、2006年に国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI、Principles for Responsible Investment)を提唱したことがきっかけです。リーマン・ショック後に資本市場で短期的な利益追求に対する批判が高まったこともあり、2019年3月末時点で2400近い年金基金や運用会社などがPRIに署名しています。

表:PRIに署名するアセットオーナーの数と運用資産残高の合計

 

ESG投資には7つの手法がありますが、代表的なものはネガティブスクリーニング(ダイベストメント)と呼ばれる手法です。「倫理的・社会的・環境的な価値観に基づいて特定の業種や企業には投資をしない」という考え方であり、例えばタバコ会社や武器を作っている会社、化石燃料関連企業等には投資をしない、あるいは投資を引き上げる行動をとります。また、ESGインテグレーションという手法もよく使われます。これは、通常のリサーチや運用プロセスにESG要素を加味・統合して銘柄選択を行うという考え方です。欧州では当たり前の手法となっています。

私達の公的年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もESG投資に積極的で、株式運用を委託する金融機関にESG投資をするように要請し、重大なESG課題については投資先企業と積極的に会話するよう求めています。またESG指数に基づいた株式投資や債券投資等、すべての投資資産でESGの要素を考慮した投資を進めています。
GPIFのHPには、ESG投資とSDGsとの関係について以下のような図と記載があります。

図:ESG投資とSDGsとの関係

実はESG投資とパフォーマンスについて、まだはっきりとした結論はでていません。ただし、前述したように、ESGにネガティブな企業にはお金が集まらなくなってきています。これからは人も集まらないのではないでしょうか。
地球環境を破壊したり、ダイバーシティに背を向けている企業に投資をしたいでしょうか。また、皆さんはそんな企業で働きたいと思うでしょうか。

昨年9月から続いているオーストラリアの大規模な山火事、いまだに沈静化していません。東京都の50倍以上の1,000万ヘクタールが焼け、コアラやカンガルーなど野生動物10億匹が死んだと言われています。その原因は一つではないものの、地球温暖化が影響していることは間違いないそうです。日本でも今年の冬は異常とも思える暖冬です。地球環境を守り、誰もが住みよい社会にしていく、それを投資の力でも後押しできる時代です。ESGとSDGs、今後もぜひ注目していってください。

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