「首都防衛」の現在地Q&A
Q1 東京は首都直下地震などの大規模地震の発生リスクが高いと聞きますが、大丈夫なのでしょうか?
A1 日本は世界有数の地震大国であり、関東大震災以降の約100年間で見ても、震度6弱以上の大きな地震は全国各地で発生しています。【図1】
【図1】
こうした中、都は日本の首都としての責務を果たすべく、各種インフラの計画的な維持更新、対策のレベルアップや前倒しなどにより、全国をリードする災害対策を展開してきました。建物の耐震化や不燃化、上下水道等のライフラインの強化など、都民の命と暮らしに直結する取組の推進により、首都直下地震等に対する東京の被害想定は人的・物的被害とも大幅に改善しています。【図2】
【図2】
また、災害発生時に買い物客や行楽客などの行き場のない帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設を約1,300施設、約48万人分確保しています。
さらに、世界最大級の規模となる約19,000人の消防職員や、全国平均の約3倍となる約1,000人のDMAT(災害医療派遣チーム)を有しているほか、災害拠点病院を84施設 約43,000床確保するなど、災害対策のためのリソースも充実しています。【図3】
【図3】
これらにより、安全・安心な首都東京を実現するための取組は着実に進展しています。
Q2 大規模地震が発生した場合、建物の倒壊や火災による大きな被害が心配ですが、都ではどのような対策が行われているのでしょうか?
A2 都は、耐震性が不十分な住宅の耐震化や木造住宅密集地域等の不燃化等の対策を着実に進めています。
都内の住宅の耐震化率は、2010年の81.2%から2019年には92.0%となっており、全国を上回る水準で推移しています。【図4】
【図4】
また、木造住宅密集地域等における老朽建築物の除却や建替え等により、不燃領域率は、目標とする70%に向けて66%(2023年時点参考値)まで向上しています。【図5】
【図5】
さらに、災害時の重要路線沿いにある建築物の耐震化により総合到達率は90%を超えて推移しており、建物倒壊等による道路への影響が軽減され、救助活動や物資の輸送等の災害対応を迅速に行える状況となっています。【図6】
【図6】
また、災害時に避難経路・緊急車両等の通行機能を確保するため、道路上の電線類を地中化し、電柱を撤去する無電柱化を進めています。都市機能が集中するセンター・コア・エリアや重要施設を連絡する第一次緊急輸送道路等を重点整備してきた結果、センター・コア・エリア内の都道は概ね完了し、環状七号線内側エリアに拡大し整備を進めているところです。【図7】
Q3 災害時に、水道やトイレ、電力、通信などのライフラインが使えなくなることが心配ですが、都ではどのような対策が行われているのでしょうか?
A3 都は、ライフラインの被害を軽減し、災害発生時においてもできる限り機能させるための取組を進めています。
災害拠点病院や避難所などの重要施設に接続する水道管路の耐震化率は約91%で、全国平均を大きく上回っています。また、導水管や送水管、配水本管などの基幹管路の耐震適合率は約67%で、過去10年で大幅に向上し、こちらも全国平均を上回っています。【図8】
【図8】
加えて、これまで下水道施設の耐震化を着実に進めてきたことで、重要施設から水再生センター直前の合流地点までの下水道管路の耐震化率は約81%と全国平均を大きく上回っています。【図9】
【図9】
電力に関して、都は、都・区市町村施設、災害拠点病院等の重要施設に非常用電源を100%配備するとともに、非常用発電設備の燃料確保のために石油連盟と覚書を締結しています。この他、東京電力では、重要な送電線は変電所を起点として網目状に構成しており、送電線で被害を受けても他ルートからの供給を可能とするなど、大規模停電を発生させない体制を構築しています。【図10】
【図10】
災害時の通信については、行政無線や災害時優先電話、業務用MCA 無線等により、重層的な連絡体制を構築しています。また、全区市町村に対し、衛星通信機器の配備を完了する等、複数のネットワークで構成される通信体制を構築しています。【図11】
【図11】
これらの取組により、首都直下地震等に対する東京の被害想定では、2012年から2022年の10年間で断水率や停電率等のライフライン被害は着実に改善しています。
Q4 激甚化・頻発化する台風や豪雨によって、全国各地で毎年のように大きな被害が発生していますが、東京は大丈夫なのでしょうか?
A4 都は、豪雨等による風水害への備えとして、護岸や調節池等の河川整備を計画的・段階的に進めています。こうした取組により、平成29年に発生し各地に大きな被害をもたらした大規模台風においても、50年前に発生した同規模の台風と比較して、浸水被害が激減※しています。【図12】。(※浸水棟数 昭和41年台風4号:41,953棟→平成29年台風21号:35棟)
【図12】
また、雨水貯留施設などの下水道施設の整備を着実に進めてきたことで、内水氾濫による浸水被害を大きく軽減しています。中野区・杉並区に整備した和田弥生幹線(貯留管)の流域では、同幹線が整備される前には大規模な浸水被害が頻発していましたが、一部貯留を開始した平成9(1997)年以降は激減しています。さらに、平成19(2007 )年の本貯留開始後は大きな浸水被害は発生しておらず、浸水被害の軽減に大きな効果を発揮しています。【図13】
【図13】
Q5 もし大災害で都心部に被害が発生した場合、首都としての機能が麻痺してしまうことはないのでしょうか?
A5 都は日本の首都としての責務を果たすべく、各種インフラの計画的な維持更新、対策のレベルアップや前倒しなどにより、安全・安心な都市の実現に向けて取り組んできた結果、首都直下地震等に対する東京の被害想定は大幅に改善しています。
この他、首都機能に甚大な被害が生じた場合に備え、国は、総合的な防災基地として立川市に広域防災基地を整備しています。立川広域防災基地には、国の災害対策本部の予備施設である立川防災合同庁舎をはじめ、陸上自衛隊や海上保安庁、警視庁、東京消防庁、災害医療センター等の施設が徒歩圏内に集積しています。
都は、立川広域防災基地内に、万が一に備え、都庁舎の代替機能として、立川地域防災センターを整備するとともに、多摩広域防災倉庫を設置し、国や各機関と緊密に連携することで、高度な応急対策等を実施できる体制を確保しています。
都は今後、都全体の災害対応力を高めるため、立川地域防災センターと多摩広域防災倉庫の更なる機能強化に取り組むこととしています。【図14】
【図14】