令和7年7月23日「全国知事会議」東京都の発言要旨
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【行政サービスの違いについて】
税収に地方交付税等を加えた一人当たりの一般財源額で見ると、東京都は全国平均と同水準であり、是正すべき税収偏在や財政力格差はない。また、都においては、施策の実現のため事業の徹底した見直しを積み重ね、この9年間で合計9,400億円の財源を捻出している。
(水道基本料金の一時無償化等の施策により行政サービスの格差が生じるとの他県知事の発言について)今回の東京都の取組は、物価高騰の影響が続く中、予想される猛暑において「都民の命と健康と暮らしを守る」観点から、この夏に限った臨時的な特別措置として実施するものである。財源は、一般会計の歳入・歳出において、今年度の特例的な事情を踏まえた精査により捻出し、水道事業に繰り出す形で対応することにしている。こうした意味において、行政サービスの違いは、各首長が何を重視するか、いわば優先事項、プライオリティの問題であると考えている。
【人口問題について】
人口問題は喫緊の課題であり、東京都としても、この提言(「人口減少問題を克服し希望ある未来の創造に向けた緊急提言」)にある誰もが安心して働き暮らせる地域づくりや、安心して子育てができる環境づくり、地域産業の高付加価値化といった趣旨に大いに賛同する。とりわけ広島県から紹介があった男性の家事、育児推進に向けた条例の検討という話もあり、若者や女性に選ばれる地域づくりの視点には強く賛同する。
ちょうど東京都も、均等法の成立から40年の今年、経済界や社会全体に女性活躍を加速させるための新たな条例の制定の検討をしている。また、女性活躍の輪を全国に広げる取組を展開している。
一方で、東京一極集中を問題視して、人口減少や地域経済の低下に結びつける議論など、一部ファクトに基づかない主張もあり、懸念している。提言文の修文を求めるものではないが、意見を述べさせていただきたい。
まず、人口については、東京のみならず、札幌、仙台、大阪、福岡などの大都市に集積している。また、東京都では有配偶出生率という、配偶者のいる女性の出生率は全国平均を上回っている。また、出生の先行指標となる婚姻率は全国で1位である。また、婚姻数も増加傾向にあるなど、明るい兆しも見えてきている。
企業が東京へ集中しているとの指摘もあったが、特にコロナ禍以降、企業の本社は東京から大きく転出超過が続いているというデータもある。
このほか、大学の集積によって、都に全国の学生が集まるとの指摘もあった。都内大学の学生の7割は東京圏からの進学である。その一方で、特に西日本の学生は東京よりも近畿圏やそれぞれの地域内への進学が多いという実態がある。
今後もこういったファクトを共有させていただきながら、議論を重ねて、東京都としても皆様と一丸となって国全体の喫緊の課題である人口問題に取り組んでまいる所存である。
【いわゆる偏在是正等について】
提言案(「地方税財源の確保・充実等に関する提言」)に関する考えを2点簡潔に申し上げる。
まず、項番Ⅳの3(※1)の利子割に関して、国の検討会では限られたサンプル調査数に基づいて議論している。東京都では0.0028%というサンプル数で、預貯金残高シェアの正確性に疑義がある議論になっていることと、利子割税収に占めるシェアの大幅な増加も直近2年のみで、令和6年度は低下する見込みであるなど、議論の前提が異なる。
都としても、税収帰属の適正化に向けた検討を否定するものではないが、まずは十分に実態を把握して、住所地課税の実現に向けた対応を検討すべきで、安易な清算制度の導入など拙速な対応を行うべきでなはいと考える。
もう1つ、項番Ⅳの6(※2)について、東京都の財源を念頭に地方法人課税などを国税化する、いわゆる偏在是正措置を求めるというのであれば、地方分権に逆行する不合理な措置を求める主張であり、賛同いたしかねる。行政サービスは、それぞれの自治体が抱える課題などを踏まえて必要なサービスを展開していくのが地方自治の本旨である。
さらに東京都は、東京のみならず、日本経済全体の底上げにも向けて、スタートアップ成長支援や、多くの皆様にご利用いただいているTIBという施設の運営などに多くの予算を振り向けている。先ほど愛知県知事からもお話があったが、限られたパイの奪い合いではなく、地方の権限を高め、税源移譲を進めるなど、地方全体の財源の充実・確保こそが重要であり、知事会が地方の総意としてとりまとめるべきであると考える。
※1・・・Ⅳ 3個人住民税の充実確保等
※2・・・Ⅳ 6税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築