東京23区の大学定員規制のQ&A
コンテンツ(目次)
23区大学定員規制の概要と大学や若者の声
-
どうして23区規制が始まったの?
-
進学による若者の東京流入を抑制すべきという地方の主張を背景に、平成30年に「地方大学・産業創生法」が成立し、東京23区の大学の定員規制が始まりました。
-
実際に規制によって何が妨げられているの?
-
23区内にある大学は、「23区にある」という理由だけで定員を増やせず、学部・学科の新設のほか、キャンパスの移転や再編も妨げられています。
具体的には規制によって以下のようなことが妨げられています。
①新しい学部や学科を作る
②ニーズの高い既存学部等の定員を増やす
③キャンパスを統合して学部や学科、学年の垣根を超えた学びを提供する
④キャンパスを再編して、研究施設を集めたり、新しく作ったりする
-
例外規定はないの? 例外規定を活用すればよいのでは?
-
高度なデジタル人材を育成する学部などに対しての例外規定もありますが、既存学部の削減など、制約が多く活用されていません。
【主な例外規定】
①スクラップ・アンド・ビルド
大学の定員を増やさず、既存学部の削減と新設を同時に行うのであれば、学部・学科等の新設は認める
②高度なデジタル人材
AIやデータサイエンス、DXを担う「高度なデジタル人材」を育成する学部・学科であれば、定員増を認める。
ただし、7年以内に定員を戻すこと
-
規制によってどんな悪影響が出ているの?
-
東京都が令和7年度に実施した調査では、23区内の41大学が規制の影響を受けたと回答しています。
具体的には、「IT・デジタル分野など成長分野の新学部設置を断念した」、「新たなカリキュラム編成に必要な教員採用・設備投資が困難になっている」など、多くの大学から規制が妨げになって長期的な大学改革や将来構想を描きづらくなっているとの声が上がっています。
【主な意見】- データサイエンス関連の学部新設を構想しているが、既存学部の定員の削減がネックとなり実現できずにいる
- IT・デジタル関連人材の不足に応える新しい学部を検討したが、規制のために見送った 。
- 規制があることで、文理融合で社会課題を学ぶ学部の23区内のキャンパスへの新設を断念し、23区外のキャンパスに設置したが、学生の受け入れが難航している。
- 近隣県のキャンパスにある学部の学生も含め異なる学部の学生たちを23区内のキャンパスで共修させたいが、規制によりできない。
- 現在、近隣県のキャンパスに通う1~2年生を研究・教育環境の整っている23区内のキャンパスに通えるようにし4年間一貫教育を行いたいが、規制によってできない。
- 規制により定員を増やすことができず、定員増による収入増加が見込めないため、新たなカリキュラムを作ろうとしても、教員の採用や設備投資がしづらい。
- この規制が足かせとなって長期的な計画や将来像が描けず、大学改革が進まない。
-
規制に対して、若者はどう考えているの?
-
東京都が令和7年度に実施した調査によると、現に、高校生や大学生からは、「進学先の選択肢が狭まる」、「どこの大学で学ぶかは学生自身が決めるべき」といった、規制を懸念する声が聞こえてきています。
また、「新しい学部をつくり、時代に即した人材育成ができる環境にすべき」との意見もあり、規制が社会の変化に対応した学びや人材育成の妨げとなることへの懸念も示されています。
【主な意見】- 23区内の大学へ進学を希望している高校生の選択肢が狭まる(東京都・高校生)
- 東京で新しい価値観で学びたい人の意欲が低下してしまう(静岡県・高校生)
- どこの大学に行きたいかは学生が決めることで、その希望を国の都合で潰してしまうのは良くない(沖縄県・高校生)
- 時代によって必要となる学びが変わってきている中で、東京23区内にあるというだけで規制するというのは不公平だと思う(岩手県・大学生)
- どんどん新しい学部を作って、時代に即した人材を育成できる環境にするべきだと思う (福島県・高校生)
- 地方の大学に進学してほしいなら地方の大学の魅力を上げるべきであって、東京の大学の魅力が高まるのを抑制するのは本質的な解決になっていないと思う(京都府・大学生)
- 規制ではなく、地方の大学に魅力的な学部を作れば良い (岡山県・高校生)
規制による効果はない
-
東京都内の大学に、地方から若者が集まっているのでは?
-
東京の大学に入学する学生の7割以上が東京都や神奈川県、埼玉県、千葉県の高校出身です。
また 西日本のほとんどの府県では、都内大学に進学する学生の割合が1割未満となっており、東京都内の大学が、地方から若者を集めているという事実は誤りです。
-
23区規制によって、地方大学に進学する人の割合は増えたの?
-
規制が始まってからも、地方の高校出身者のうち地方の大学に進学する学生の割合は横ばいです。
こうしたことからも、23区規制を継続するのではなく、地域の大学の魅力を高める取組を一層進めることが重要であることは明らかです。
-
23区規制が始まって以降、地元に就職する学生は増えたの?
-
規制導入前から地方における自県就職率は低下傾向のままです。
-
地方の若者が減っており、相対的に都内の大学に進学する学生の割合が高まっているのでは?
-
一都三県を除いた全国の大学進学者のうち、都内大学へ進学する人数の割合は規制以前から低下傾向にあります。
規制は国の成長戦略とも逆行
-
日本の成長には何が重要?
-
人口減少が進む中でも、我が国が世界の成長から取り残されないためには、科学技術やイノベーションの力が益々重要になります。
主要国の名目GDPの推移において、日本は2030年までに6位に転落する見通しのなか、OECDの「GDP成長の要因分析」によると、日本の経済成長には労働・資本に加え、技術進歩やイノベーション、経営効率化などによる生産性の向上が必須であるとしています。
-
科学技術やイノベーションにおける日本の現在地は?
-
科学技術や人材の力こそが国力そのものですが、科学技術やイノベーションの人材育成で日本は後れをとっています。
注目度の高い論文数※1 世界ランキング(分数カウント法※2)において日本は、平成14年は4位だったものの、令和4年時点では13位に下落しており、この間に韓国に順位が抜かれている状況です。
また、各国のイノベーション能力とその成果を評価するGII(グローバル・イノベーション・インデックス)においては、令和7年時点で12位と韓国やシンガポール、中国の後じんを拝する状況です。
※1 被引用数が上位10%に入る論文の数
※2 日本の機関Aと米国の機関Bの共著の場合、それぞれ1/2と数える方法
-
科学技術やイノベーションなどの理系人材の国内における育成の現状は?
-
デジタル化の急速な進展など産業構造が変わり、2040年には理系人材が120万人以上不足する恐れがあり、文科省も都市部私大の理系拡充を掲げています。
日本の成長に必要なのは、23区の大学も含め総力を挙げて人材育成に取り組むことであり、23区大学へ定員規制を行うことは、社会の要請にも国の政策にも逆行しています。
-
企業はどういう人材を求めているの?
-
複雑・多様化する課題に対応していくためには、自然科学や人文・社会科学といった学問分野の枠を超えた教育が必要であり、企業もそうした人材を求めています。
例えば、防災・減災は、理系による災害予測と、文系による人の行動の理解を組み合わせてこそ、実効性を持ちます。
そして、企業も大卒者に対し、若者に文系・理系の枠を超えた知識や教養を期待しています。
-
世界の先端領域分野に対する大学改革の事例は?
-
世界では、先端領域などの分野の人材育成のため、大学改革が進んでいます。
日本の成長のためには、23区の大学も含め人材育成を加速させていくべきです。
【先端領域分野の人材育成のための大学改革を行った事例】
マサチューセッツ工科大学(アメリカ)
AI・コンピューティング教育を全学横断で再構成
建築・都市計画学、工学、人文科学・芸術・社会科学、理学、経営学の5つのスクールと協働するカレッジを新設スタンフォード大学(アメリカ)
地球規模の気候危機解決を加速し、サステナビリティに関する緊急課題に取り組むため、学科群、学際研究所、アクセラレータで構成されるスクールを新設ニュー・サウス・ウェールズ大学(オーストラリア)
量子コンピュータ・量子センサー・量子通信など量子技術を設計・制御・応用するための工学的知識と技術を修得する学士課程を新設
記事ID:001-001-20260601-013664